- 2022.05.03 Tuesday
二羽のハクチョウ
(エレンと友達。夏井川にて)
相手はどう思っているかは知りません。でも、気になってしょうがない存在。それが小川地内の夏井川に棲む二羽のハクチョウです。
おそらくは気にかけている地域の人々も少なくないはず。川沿いの国道399号線を通るたびについ姿を追い求めてしまいます。
首を後ろに曲げて二羽揃って昼寝している様子に安堵したり、姿が見えないと心配になったりする私です。
昨冬もシベリアに回帰しなかった通称エレン。今春は頭頂部が灰色の幼鳥と見られるもう一羽も残留組となりました。
この二羽はべったりくっついているわけでもなく、かといって遠く離れているわけでもない。数メートル離れた位置でお互いを意識しつつ自由を謳歌しているように見えます。
幼いころ、私は団体生活が苦手でした。いろんなことについていけませんでした。以前触れたことがあるようにリードオルガンが私は好きではありません。あの足踏みオルガンの音色と幼いころの苦い思い出が結び付いているからです。
ひとりぽつんとしていることもよくありました。他の人と同じような行動を取れない。その切なさを私は早くに味わいました。
そのためか、長じてから読書の対象として山岳小説や漂流物を好むようになりました。新田次郎著『孤高の人』や吉村昭著『漂流』などです。強い生き方に憧れたのかもしれません。
帰還しない二羽のハクチョウを見ていたらそんなことをぼんやりと考えてしまいました。
でも、案外そんなペーソスの漂う話ではなく積極的選択によって夏井川を安住の地にしているのかもしれません。
「エレンさんは去年シベリアに帰らず寂しくなかったのですか」
「ぜーんぜん。夏はたしかに暑かったけどさ、水に入っていれば凌げるし人間どもがエサを持ってくるから食物の心配はしなくていいしね」
「そうですよね。危険を冒して何千キロも飛ぶ方がおかしいですよね」
「そうなんだよ。先祖代々やってきたからと言って踏襲する必要なんかないんだよ。やってみりゃ日本で十分暮らしていける。問題ない。他の奴らがやってるからと同調圧力で渡り鳥ごっこをやってるわけよ」
「ほんとですね。あはは」
ハクチョウの鳴き声が心なしか笑い声に聞こえたのでした。
- 風景
- 08:53
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- by だいこんくん