(翩翻とひるがえる日章旗と鯉のぼり)

職場では決裁をする正式な文書以外にも様々な読み物が回覧されます。ただ判を押して回すのではもったいない。

できる限り目を通すようにしています。

そのお蔭で稀有な出会いがあったことを「おさつ大学に学ぶ」で記したことがあります。なお、このエントリーは少々冗漫な文章です。

さて、時事通信社「厚生福祉」。毎週2回火・金曜日発行の情報誌です。時事通信ニュースのスピンオフともいえるもので、独自性はあまりありません。

その第6319号(2017年4月25日)の1頁に「ときめき」と題した医療法人誠志会砥部病院院長の中城敏氏の文章が目を引きました。

「心臓にやけどを負った私は、妻からもっと優しくしてもらえるはずだった」

ミステリアスな書き出しです。

「心臓にやけど」とはいったいどういうことなのか。それと奥様との関係は...。興味をそそります。

心理を宙ぶらりん(suspense)にする、このような手法を私も身につけたいものです。

さて、氏の恩師の「芸の一つも身につけた方が良い」との助言に従い、奥様に内緒で料亭の美人女将に民謡や都々逸の手ほどきを受けていたという。

氏は率直に語ります。

「女将に会えると思うと『ときめき』を覚えた」


(私の好きな田植え前の田んぼ)

その後、女将は料亭をたたむ。が、それでも「ときめき」が続く。心電図を取ると発作性心房細動だった。

後輩の名医に心筋を電極で焼くカテーテルアブレーション手術を施してもらう。全身麻酔で苦痛なく3時間の手術は終了。

ところが、退院の日、迎えに来るはずの奥様が来ない。奥様は総胆管結石で救急搬送されるところで、氏も同乗。

「私の療養のための3日間は、妻の付き添い入院となってしまった。美人女将にうつつを抜かしたせいである」

結びに「恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす」との都々逸を引きます。

「妻に気づかれまいと鳴かずの」氏は心筋を焦がし、奥様に付き添う間に「ときめき」は消失してしまったという。

構成も文章も素敵です。一読して氏にお会いしたくなりました。

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