(何を話しかけているのか)

文字の力を感じました。要約筆記者養成講習会の閉講式に主催者として出席したときのことです。

要約筆記は、中途失聴者や難聴者のコミュニケーション保障の手段の一つです。手書きによる要約筆記とパソコンによる要約筆記があります。

修了最後の時限として、1時間の講演の音源を再生して書き取る研修がありました。30分を手書き要約筆記、残り30分をパソコン要約筆記によって行うというものです。今回の修了予定者は2名です。

始まる前、私は思いました。

パソコンの方が断然早いし、要約できるボリュームも多い。手書きはパソコン要約筆記に適わないだろう、と。

1時間の講演を聞き終わり、私は不思議な思いにとらわれました。

私は軽度の難聴です。補聴器をしていますが、顔が見えない音源再生だけの講演は聞き取りが難しい。なぜなら、口唇の動きを読み取りながら聞いているからです。

音源の再生が始まると案の定、2割程度しか理解できません。

まさに要約筆記が必要としている状態です。

手書き要約筆記は、確かに遅い。

しかし、研修の賜物でしょう。余計な情報が削ぎ落とされ、言葉が文字通り「要約」されているのです。しっかりと講師の言わんとすることが伝わってきました。何よりも手書きの持つ味わいが温かさを添えていました。

後半の30分はパソコン要約筆記です。手書き要約筆記とくらべボリュームが格段に増えました。手書きよりも誤字は減っています。

だからと言って、必ずしも理解しやすいかというと、そうでもないのです。話者の言葉を忠実に再現しようと要約筆記者は努力しています。

ところが、要約の度合いは手書きと比較して格段に落ちているのを感じました。また、パソコンの文字を投影した文字は読みやすいものの、無機質さは否めませんでした。

結果として、手書き要約筆記の方がより伝わってきたと言えます。

そのことを要約筆記者講習会の講師に伝えました。

「そうなんです。パソコン、イコール優れているとは限らないのです。ですから、会では要約筆記の依頼を受けるとできる限り手書き要約筆記で行うようにしています」

そのような答えが返ってきました。

文字の持つ不思議な力を垣間見た思いがします。


(神戸方面を望む。たぶん)

30年前に友人とタイ南部のハジャイを旅しました。ハジャイ(Hatyai)とは大きな浜を意味します。

現地の大学の学生たちとJBホテルという中規模クラスのホテルのラウンジで夜に飲むことになりました。

ステージでは演奏が奏でられ、女性の歌手がタイ語の歌を歌っていました。男性の歌手がステージに立ちました。

聞き覚えのあるイントロが流れ始めました。

んっ、何だろう。と思っていると歌い始めました。

♪目を閉じて何も見えず

そうです。谷村新司さんの名曲「昴」です。じつに上手い。どうしてこんなに上手に歌えるのだろう。熱唱でした。

異国の田舎町で聞く昴。熱帯で聞く昴。妙に旅情が高揚したのを覚えています。

ハジャイはマレーシアに近い町です。イスラム系住民も少なくない。辺境の地と言っていいかもしれません。

こんな場所で完璧に昴を歌う人に出会ったことに胸が熱くなりました。

しかし、不思議な歌詞です。

「目を閉じて何も見えず」

当たり前のことです。当たり前のことなのですが気になる言葉です。

ハジャイで昴を聞いて10年後、成田空港で谷村新司さんを偶然見かけました。どうもあの頭髪を見ると芸人のコロッケのパカパカ動かすカツラを連想してしまいます。

モノマネは大切な価値を毀損する場合もあると感じました。

さて、その10年後、2007年にハジャイのJBホテルはテロの脅威にさらされます。爆弾が爆発し多数の死傷者が出ました。

そして、その10年後の本年、ハジャイやその近隣から青少年たちが研修でいわき市を訪問。50日間の滞在中、何度か交流させていただきました。

というわけで、ふと思い出したことを備忘録として書き留めました。

動画サイトで谷村新司さんの昴を久しぶりに聞いてみました。が、やっぱり頭髪のパカパカが気になって厳粛に聞くことができませんでした。

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