- 2016.07.26 Tuesday
ヨーロッパから民主主義が消える
(鉄塔の屹立した姿が好きです)
川口マーン惠美著『ヨーロッパから民主主義が消える』(PHP新書)を読みました。Amazon.co.jpの「ヨーロッパのエリアスタディ」で売れ筋ランキング1位の本です。
著者は、日本大学芸術学部音楽学科卒業。ドイツのシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。シュトゥットガルト在住。
読み終えて、ある投稿者のカスタマーレビューに私も同じ感慨を持ちました。
「『ヨーロッパから民主主義が消える』というより、『ヨーロッパから”ヨーロッパ”(という一つの共同体概念)が消える』というほうが、今のEUの状況を適切に表しているのではないか」と。
EUの政策決定システムがかくも複雑であること、
EU内の豊かな国とそうでない国との確執が想像以上に大きいこと、
ギリシャが粉飾してまでなぜユーロというものを欲しがったかなどなど...
知らないことばかりでした。
国境線の内側に閉じこもる、理念とまるで矛書した加盟国の姿を目の当たりにし、著者は、ヨーロッパというものの行方末に懸念を抱きます。
いまヨーロッパは、難民とテロの流入によって、ベクトルの相異なるパワーが首をもたげ始めています。それは、分離独立という遠心力とナショナリズムという求心力です。
国境を越えて人が押し寄せてくる。そのとき民主主義は果たして保てるのか。
これは日本においても対岸の火事ではないと著者は警告します。
良書です。
デビュー作である『フセイン独裁下のイラクで暮らして』(草思社)も読んでみようと思います。
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- by だいこんくん