(カフェ コネッション。心安らぐ景観。いわき市)

(第3話からつづく)

一連の検査で院内をとぼとぼと歩いているところを知り合いの看護師さんに‘発見’された私。

「誰かのお見舞い?」

こんなに首がうなだれていて、生気もない表情で、お見舞いには見えなかったはず。

しかし、あえてそういったのだと今になって思います。

20数年来、私の通う理髪店のマスターのお姉さんがその看護師さんです。ぱりっとした感じが印象的です。

私は肺がんの疑いがあることなどを話しました。

「食欲はあるの」

「あります」

「私の目を見て」

「あ、はい」

少し間を置いてから力強く告げました。

「大丈夫。絶対に大丈夫。治るから」

当時、その看護師さんは呼吸器病棟の責任者でした。なぜ、そんなことを確信をもっていえるのか、不思議でした。

でも、言葉の持つ力は不可思議です。私は少しだけ希望を持つことができました。

一連の転移の検査を終え、クライマックスの検査が待っていました。発症元の気管支の検査です。

私は主治医に尋ねました。

「先生、気管支鏡ってつらいんですか」

「頑張ってくださいっ!」

「つらいのか」と私は訊いているのにそれへの返事はありませんでした。

気管支鏡検査室では4人の患者が待機していました。待合室でよくいっしょになるおばさんもいました。

私以外はいずれもみな痩せこけています。ガンダーラ美術の釈迦苦行像を思わせる首筋が見えたとき、私は思わず目をそらしてしまいました。

私の番です。

全身麻酔かと思いきや、喉の嚥下(えんげ)の反射を抑えるだけだという。麻酔を喉に噴霧されました。

若いドクターが気管支鏡(スコープ)を挿入し、隣室で主治医がモニターを見るようです。

スコープが咽喉を通過したそのとき、突然、私の身体は生きのいいエビのように反射。上半身がぴくぴくいっています。

「◯◯◯さん、大丈夫ですかっ」

看護師さんが尋ねます。が、スコープが喉から気管支にかけて入っていて答えられません。

思わず、意思伝達として看護師さんの手を強く握りました。「大丈夫」というように伝わったのでしょう。

スコープはそのままぐいぐいと気管支の奥に進んでいきました。

挿入している若いドクターがモニター室にいる主治医に声をかけます。

「33歳、男性。この気管支、大丈夫ですか、先生」


「そこでしゃべるな」

(第5話へつづく)

Comment
R1グランプリよりウケます!

当時の本人は闇の中だったでしょうが(^^;)
  • おこちゃん
  • 2017/03/05 10:11





   

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