(読書の際の私の特等席)

「月刊みんなねっと」(公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会発行)通巻第125号(2017年9月号)が職場で回覧されてきました。A5判の40頁ほどの冊子です。

前月号につづき、特集「みんなねっとフォーラム 夏苅郁子先生講演録」を楽しみにしていました。今号は「その3」です。

「現在言われている病気の原因は、あくまで仮説です。知識の一端として利用しながら、どうか、快復には科学でははかれない予想外の展開もあることも心に留めてほしいです」

「そして、世間や医学が決めた快復だけにこだわらず、本人が自分で考えた快復にも価値があると、どうか、自信をもってほしいです」

医師としてなかなか言えない言葉です。

夏苅さんは、大量の薬を飲んで自殺をしようとした自身の体験を披瀝します。もう一度自殺を試みたとき、少し前に同僚の医師が自殺したのだという。

生々しい索条痕のある同僚の遺体と対面します。

「あとでご両親が来て、彼女の遺体を見ました。その場面は、忘れることができず、自分にはとてもできないと思いました」

では、夏苅さんはどのようにして快復したのか。そのきっかけは何だったのか。

「私の人生で一番助けになった人。それは、親でも医療者でもなくて、ごくごく一般の方々でした。他人の助けが人生を変えました。(中略)そして、人の次に助けになったのは、時間だったんです」

人の支えと時間は薬だという夏苅さん。

「おそらく長ーい時間と休息の間に、自分でも気づかない変化が起きたのかもしれないと思います。その後も、人との出会いで私は快復しましたが、その根底にあるのは、決して何か特別なきっかけではないんです」

10年近く前、私自身がうつになった経験からも心から納得する言葉です。

「あてはないけれど待つ。快復にはこうした強さが必要なのかなと思います。納得する、信頼できる人に相談できる、孤立させない仲間がいる、時間がそれをその人が快復するまで周囲が焦らず待つこと」

待つことは最大の支援だと訴える夏苅さんの考えに心から賛同します。

先週出版された夏苅さんの新著『人は、人を浴びて人になる ― 心の病にかかった精神科医の人生をつないでくれた12の出会い』。

さっそく注文。楽しみです。

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