- 2015.03.17 Tuesday
牛の顔としっぽ
(抹茶の薫りがじつにいいです)
意識調査とスープの味見。じつは似ています。味見するのにどんぶり一杯がぶ飲みする必要はありません。
同じように、調査対象をよくかき混ぜれば、アンケート調査において何万もの回答は不要です。
全数を調査せずとも、少ない情報から傾向をつかみ、実態を類推するのが意識調査です。
NHKの政治意識月例調査は、RDD追跡法で全国20歳以上の男女約1500人に電話をし、毎月約1000人から回答を得ています。全国の有権者1億人に対する割合は0.001%。
次元は異なりますが、少ない情報から判断を下すことの重要性を早稲田大学ビジネススクールの内田和成教授は「仮説思考」として提唱しています。
数年前、内田教授の講義を受ける機会があり、深く感銘を受けました。余談がじつに面白い。余談の印象が強すぎてほとんど本論を覚えていません。
仮説思考とは「情報が少ない段階から、常に問題の全体像や結論を考える思考スタイル」です。
内田教授は、かつて経営コンサルタント会社のBCGに勤務していたころ、「情報は多ければ多いほど良い意思決定ができる」と考えていたそうです。
必要と思われるあらゆる情報をかき集めてから判断する。内田教授はこれを「網羅思考のワナ」と呼んでいます。
リーダーはこれではだめだ、と。
「常に限られた時間の中で答えを探すこと」そして、「情報が不足している段階で問題の真因を探り、解決策を模索すること」が大事であると訴えています。
その意味で、リーダーというのは厳しいものだなと思います。
「リーダーは牛の顔を見てしっぽの形を判断できるようにならなくてはならない」というのです。
組織の上に行けばいくほど、第一線の情報の臨場感は薄れていきます。量も限られてきます。
当然、情報の少なさにいらだつこともあるでしょう。不安も大きい。孤独です。もっと情報がほしいと思うでしょう。
でも、決断しなければならないのです。
あのとき菅直人首相は、耐えられず、ヘリコプターに乗って原発に行ってしまいました。
牛の顔だけでは判断できず、しっぽの形を見ないと不安だったのでしょう。たぶん。
というわけで、自分自身は、驥尾(きび=名馬のしっぽ)に付して万里を渡る蒼蠅(そうよう)でありたいと思うだいこんくんなのでした。
(参考図書)
内田和成著『仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法』(2006年、東洋経済新報社)
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- by だいこんくん