- 2017.01.30 Monday
五浦(いづら)
(五浦の六角堂)
両親は五浦が好きだったようです。よく私を連れて行ってくれました。父たちと何を話したのかは覚えていません。
ただ茫洋たる大海原を眺めていたような気がします。
私の住んでいた社宅は五浦から10kmほど北の鮫川の河口にありました。
川の流れと海の潮が作る中州があり、シジミやアサリが採れました。気持ちよいくらい、砂の浜辺が広がっていました。
(五浦の海)
一方、五浦の景観は切り立った崖と岩礁がその特徴です。
単調な砂浜に慣れていた私は、いかにも磯らしい五浦が好きでした。うらやましくも感じました。
岡倉天心がここに六角堂を築いたのもむべなるかな、と思います。天心と親交のあったインドの詩人・タゴールも、天心没後に墓参を兼ねて五浦に足を延ばしています。
元気がなくなったとき、私は、ふらっと五浦に足を運びます。五浦を逍遥(しょうよう)するとなぜかもう一度頑張れそうな気持になるのです。
30年近く前の春、同級生と二人で五浦を訪れました。私が誘ったと記憶しています。
彼は、国家公務員一種を合格したにもかかわらず、卒業するための単位が足りないことが判明。一方、私は両親の病のためにタイの大学院への進学を断念し帰郷。
事情は異なるものの二人とも意気消沈していました。交わす言葉も少ない。
二人で五浦の地に立ち、黙って海を眺めていました。しばらく潮風に吹かれていると英気が漲ってくるのを感じました。
独特の景観が気持ちを高揚させるのか。あるいは、岩礁の成す独特の波音が脳を刺激するのでしょうか。
(茨城県天心記念五浦美術館から北方を望む)
五浦は、東山魁夷の描く「唐招提寺御影堂障壁画」の岩礁に似ている、と私はいつも思っています。
その東山魁夷の「唐招提寺御影堂障壁画展」が2月11日から4月2日まで水戸の茨城県立近代美術館で開かれるという。知人から情報を得ました。
春はもうすぐ。
梅香る水戸に磯の絵画を愛で、その足で磯香る五浦に行ってみようと思います。
せっかくなので水戸芸術館のパイプオルガンも聴いてみようかしらん。さらに、せっかくなのでおかめ納豆の納豆博物館にも寄ってみよう。
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- by だいこんくん