(新川にて)


外山滋比古著『思考の整理学』の「整理」という章を抜粋し要約してみました。忘れるということについて言及しています。引用は順不同です。


「こどものときから、忘れてはいけない、忘れてはいけない、と教えられ、忘れたと言っては叱られてきた」


「学校が忘れるな、よく覚えろ、と命じるのは、それなりに理由がある。教室は知識を与える。知識を増やすのを目標にする」


「これまでの教育では、人間の頭脳を、倉庫のようなものだと見てきた」


「せっかく蓄積しようとしている一方から、どんどんものがなくなって行ったりしてはことだから、忘れるな、が合言葉になる。ときどき在庫検査をして、なくなっていないかどうかをチェックする。それがテストである」


私の場合、いつも欠品していました。いつのまにか棚から「記憶」がごっそりと消えてしまっていました。もう少し引用を続けます。


(沈思黙考する猫)


「かつては、忘れてはいけない、忘れてはいけない、と言っていられた。倉庫として頭を使った。中が広々していたからである。このごろは入れるものが多くなったのに、スペースには限りがある」


「忘れる努力が求められるようになる」


私の場合、努力せずとも容易かつ簡便に忘却することができます。ほぼプロフェッショナルです。


「頭をよく働かせるには、この“忘れる”ことが、きわめて大切である。頭を高能率の工場にするためにも、どうしてもたえず忘れて行く必要がある」


次の文章は当該章の末尾です。一番心の中に残った言葉です。座右の銘としたい。


「忘れるのは価値観にもとづいて忘れる。おもしろいと思っていることは、些細なことでもめったに忘れない。価値観がしっかりしていないと、大切なものは忘れ、つまらないものを覚えていることになる」




(プラスベストカフェにて)

本年10冊目の本は安宅和人著『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』(2020年、ニューズピックス)です。職場の大先輩に勧められました。奥付に第10刷発行とあります。

孫引きとなります。宮大工の小川三夫氏の言葉です。小川氏は著名な宮大工の西岡常一氏の唯一の内弟子だという。

「薬師寺の東塔に入ったら、ほんま、不揃いな木ばっかりだ。それでも力強いん だな。あれも不揃いのよさや。外側はちゃんと整っているが、裏では不揃いが総持ちで支えているっていうのは、やはり最高のものだろうな」

組織というものも不揃いの人々による人材城なのだろうと思います。異なるものを排除しない思想がいまこそ求められているのではないでしょうか。

著者の安宅氏は「異人の時代」だと主張しています。

「このような『創造』『刷新』こそが大切な時代、ではどのような人が未来を作るカギとなる人材なのか」と問います。

「(前略)何もかもにおいて自分が詳しいということはあり得ない。むしろ、自分が仕掛けようとするどんな話題でも相談できる人、すごい人を知っている人が大切だ」

言い換えれば、“know how”ではなく“know who”と言うことができるでしょうか。

「一言で言えば、これからの未来のカギになるのは普通の人とは明らかに違う『異人』だ」

ふむふむと思いながら読んでいます。結局、付加価値を与えられる人のことなのだろうなと解釈しました。

翻って我が身はどうなのか。きょうも何か発見があったのか。付加価値に資する気づきがあったのか。顧みます。

一つありました。

不二家チョコレートチップクッキー「カントリーマアム」を個包装から取り出して電子レンジで20秒温めたところ、病みつきになるほどの美味しさが実現しました。

これは依存性の極めて高い試みですので、普通の人はご遠慮ください。危険です。異人のみ焼き立ての美味さを味わってくださるよう切にお願いします。


(シンガポール製の高級なジャスミン茶をいただきました)

弱々しいロボットではなく「弱いロボット」。自分の力だけでは問題を解決できない弱い存在。でも、周りと豊かな関係性を構築して最後は目的を達成してしまう。そんなロボットです。

優れた人というのは何となくぼんやりと感じていることを言語化することに長けている人だと私は思っています。暗黙知を言葉によって共有できるようにするのが文化の営みと言えます。

岡田美智男著『〈弱いロボット〉の思考』(2017年、講談社現代新書)を読みました。著者は福島県出身。親近感が湧きます。

「ただ『とにかく便利なモノを・・・・・』という工学的な呪縛のなかで、わたしたちはいつの間にか『ひとりでできるもん!』というような個体能力主義的な考え方に囚われていた」


(綿のテーバッグに高級感があふれる)

ともすると何でもできることを私たちは目指してきたように思うと著者は言います。弱いロボットとして「ゴミ箱ロボット」を学生たちと開発。

実際の動画はこちらです。

「近くの人に委ねながら、そのアシストを上手に引きだし、結果としてゴミを拾い集めてしまう。これは自らのなかですべてを解決しようとする〈個体能力主義的な行為方略〉に対して、いわゆる〈関係論的な行為方略〉そのものである」

人間の存在を抜きにした完全無欠なゴミ拾いロボットとは異なるアプローチです。ゴミの近くに寄ってモジモジとしていかにもゴミを拾ってほしいという仕草をするゴミ箱ロボット。拾ってもらうと会釈のような動きをします。自然と人間がゴミを拾う雰囲気を作り出します。

「〈弱さ〉には、もうすこし積極的な意味があるのではないか・・・・・と感じた瞬間でもあった。いわゆる臨床哲学の分野で驚田清一先生の指摘した〈弱さのちから〉である」

「お互いの〈強み〉を生かしつつ、同時にお互いの〈弱さ〉を補完」することで「ロボットはすべての能力を自らのなかに抱え込む必要はない」と著者は考えます。引き算のデザインと呼んでいます。

この補完の関係におけるポイントとして「相手に対する〈敬意〉や〈信頼〉のようなもの」が重要であるとし、「お互いの〈弱い〉ところを開示しあい、そして補いあう。一方で、その〈強み〉を称えあってもいる」といった関係が大切になってくると訴えます。


(いい本に出逢いました)

私は思いました。

対ロボットのみならず対人間においても同じではないか。いや、むしろ人間関係においてこそ、そもそも人間は〈弱い〉のだという原点に立ち返る必要があるのではないか。ホモサピエンスは元来弱い生き物です。

ますます複雑化し、変化の著しい社会にあってリーダーのあり方が問われています。人々は卓越した完璧なリーダー像を求め、一方、求められた側のリーダーもまた全能性・無謬性を引っ提げて立ち向かおうとする。できないのにもかかわらず。

ここにお互いにフラストレーションが嵩じる要因があると私は見ています。

今回、『〈弱いロボット〉の思考』に触れ私は澱のようなわだかまりがだいぶ晴れたような気がしました。難聴という障害でこれまで仕事上数々の失敗をし、これからも起き得ることを恐れていました。

しかし、そうではないと思いました。

率直に〈弱み〉を提示し、周囲に助けてもらう。業務そのものにおいても自分自身が全てを完璧に判断しようとするのではなく、助けを求め、豊かに関係性を作り上げていく中で目的を達成する。

そのような生き方ができたらいいなと思います。


(パーゴラが空に映えます。いわきワイナリーにて)

齋藤孝著『質問力』(2006年、ちくま文庫)を再読しています。同氏の講演会で直接話を聞いて以来、以前にも増して著作に触れる機会が増えました。惹かれます。

「『質問力』に関してまず大切なのは、聞き方がうまければ、自分に実力がなくてもおもしろい人のおもしろい話が聞き出せるということだ。質問がおもしろければ人はどうしても教えてあげたくなってしまう」

私たちは学校でつねに答える力を試されてきました。要するに答える質を問われてきた、と著者は言います。

「だがいちばん大事なことは、問いを作ることだと私は思っている。たとえば数学で超難解と言われた『フェルマーの定理』が先年証明された。この定理を解いた人は確かにすごいが、一◯◯年以上も人々を楽しませてきたフェルマーはもっとすごいと私は思う。そういう問いを発せられたということが、非常に高い能力を有している証拠である」

「問い」にこそその人の持つ力が表れると言ってよいでしょう。

テレビでの討論会などで私たちが注目すべき点はどういった点か。著者は違った視点を提供します。

「普通はおもしろい発言をする人に目がいってしまう。しかし本当はそれを導き出した問いがあったはずだ。その問いの設定がなければ、おもしろい話は出なかっただろう」

「質問」にはコミュニケーションを円滑にする力が備わっています。初対面や異なる価値観の人とも上手くやっていく方法として問いを活用することを推奨します。そういった場面を著者はアウェイと表現しています。

「しかし質問さえできれば、アウェイでもコミュニケーションができる。アウェイというのは相手がよくわからない状況をいうが、そんな時でも質問次第で相手の言葉を引き出せる。それによって相手の状況がわかってくるから、さらに深めた質問をする。その繰り返しによって『気が合うね』という状況をつくり出すことも可能である」

というわけで、出勤途上、特別職の先輩と交差点でいっしょになりました。いつもなら「寒いですね」で終わるところです。

「最近読まれた本でお勧めの本、ありますか」

「『シン・ニホン』(安宅和人著)がいいね。エビデンスに基づいてきちんと分析している」

「事実に基づいた論が展開されているんですね」

「そう。あとはずっと読んでいるのが出口治明さんの本。日本生命を辞めてライフネット生命保険を創業した人。いまは立命館アジア太平洋大学学長を務めている」

「存じ上げています」

交差点から職場まで有意義な100mの対話となりました。早速、『シン・ニホン』と出口治明さんの著作を注文しました。


(自粛な日はうちで開店)

今月の6冊目はリンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著、池村千秋訳『LIFE SHIFT』(2016年、東洋経済新報社)です。話題になった本です。奥付を見ると第14刷と記されています。

もう少しで読み終えます。

主に湯船で読んでいます。湯に浸かりながらの読書が好きです。とは言え、注意が必要だと近ごろ感じています。

浴槽内での溺死が高齢者を中心に年間何千人もいるとのこと。その原因の一つが水圧で圧迫されていた血管が湯船から上がることで急激に弛緩し血圧が低くなることによる意識消失だという。

親からもらった命です。大切にしなければと思います。せめて父の寿命までは生きたい。あと数年。その後はおまけというか、二次会のようなものです。

さて、『LIFE SHIFT』の「日本語版への序文」に次のようにあります。

「国連の推計によれば、2050年までに、日本の100歳以上人口は100万人を突破する見込みだ。(中略)2007年に日本で生まれた子どもの半分は、107年以上生きることが予想される。いまこの文章を読んでいる50歳未満の日本人は、100年以上生きる時代、すなわち100年ライフを過ごすつもりでいたほうがいい」

国から贈られる100歳記念の銀杯もいつしか純銀製から銀メッキに変わりました。私が仮にあと46年余生きて100歳になった頃はどうなっていることでしょうか。

脱線しました。

同書では人生100年時代にあって「多様性に富んだ新しい人的ネットワーク」の重要性を訴えています。職探しでもそれは言えることだと言う。

「おそらく、職探しで重要なのは、無形の資産のなかでも知識だと思う人が多いだろう。しかし、マーク・グラノヴェターの説得力ある研究によれば、重要なのは人的ネットワークだ。なにを知っているかではなく、誰を知っているかが大切だというのだ」

“know how”より“know who”が大事だということでしょう。もちろん知識の吸収の努力も怠ってはならない。ただ、知識偏重ではいけないということです。

10年前にネット配信番組でご一緒させていただいた社会活動家の方が講演のために今月いわきにお越しになるという。会員制の講演会のため参加は叶いませんが、一目挨拶だけでもと思っています。

こういう世の中になってつくづく思います。人との出逢いほど刺激になるものはない、と。


(カントリーマアムのスピンオフに目が離せない。ラムレーズンが好きです)

そう言えば会津に住む我が仕事の師匠は美術に詳しい。詳しいというより、嗜む眼識を持っていると言った方が正確です。

料理もでき、競馬競輪にも通暁し、世界の時事を掌(たなごころ)に扱い、地元の飲み屋をこよなく愛しています。そして無類の読書家で博覧強記でもあります。

さて、新年5冊目の書籍は山口周著『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』です。二男の“積ん読”から失敬して借りました。

最近気づいたことは、特に新書の著者の年齢が私より若いということです。若い人から学ぶ必要性を感じます。

「彼らは極めて功利的な目的のために『美意識』を鍛えている。なぜなら、これまでのような『分析』『論理』『理性』に軸足をおいた経営、いわば『サイエンス重視の意思決定』では、今日のように複雑で不安定な世界においてビジネスの舵取りをすることはできない、ということをよくわかっているからです」

「論理的・理性的な情報処理スキルの限界が露呈しつつある」

「世界中の市場が『自己実現的消費』へと向かいつつある」

「(前略)精緻なマーケティングスキルを用いて論理的に機能的優位性や価格競争力を形成する能力よりも、人の承認欲求や自己実現欲求を刺激するような感性や美意識が重要になります」

「システムの変化にルールの制定が追いつかない状況が発生している」

「(前略)クオリティの高い意思決定を継続的にするためには、明文化されたルールや方律だけを拠り所にするのではなく、内在的に『真・美・善』を判断するための『美意識』が求められることになります」

へ〜と思いながら読んでいます。が、確信を持って言えることは読む前と読んだ後で私には如何なる行動の変容も起きないだろうということです。ましてや、美意識など芽生えるはずもありません。

かように行動変容は至難です。ステイホーム、ゴートゥーの後は何が来るのか。さしずめチェンジマインドかなぁと推測しています。

いや、マイペンライかもしれません。


(自家製ブランデー梅酒をバザーで数百円で買ったデキャンタに入れてみました)

部屋のあちこちに息子たちと私の“積ん読”が置いてあります。三者三様に本が違います。面白そうと感じて長男の“積ん読”から1冊拾いました。久石譲著『感動をつくれますか?』(2006年、角川書店)です。

いい著書に出逢った。読み終えての感想です。含蓄のある言葉が散りばめられています。血肉化するため、しばらくしたら再読します。

いつものように目次を目に焼き付けるようにじっくりと見つめました。気になるキーワードが飛び込んできます。

「気分の波に流されない」「心のペースづくりは生活を整えることから」「第一印象は大事」「質より量で自分を広げる」「いい音楽は譜面も美しい」「最初の印象は絶対正しい ーーー 僕の『サンドイッチ理論』」「バカはうつる、レベルは低いほうに揃う」「一番の聴衆は自分自身」「うまさより『何を伝えたいか』が大事」「オンリーワンの落とし穴」

本文の中で印象に残った箇所を抜き出します。


(2回3回と読み深めたい本です)

21頁では一流と二流の違いについて論じています。

「優れたプロとは、継続して自分の表現をしていける人のことである」

「(前略)プロとして一流か二流かの差も、力量を維持継続していけるか否かにかかっている」

「一流とは、ハイレベルの力を毎回発揮できることだ」

31頁では感性とは何かとの問いに対する著者の考えが示されています。

「作曲には、論理的な思考と感覚的なひらめきを要する。/論理的思考の基になるものが、自分の中にある知識や体験などの集積だ。何を学び、何を体験して自分の血肉としてきたかが、論理性の根本にある。/感性の九五パーセントくらいは、実はこれなのではないだろうか」(「/」は段落を表す)

知識や体験などの集積が感性の大要を成しているとの見方は興味深い。

最後に41頁の文章を引用して結びます。

「自分の曲の、最初の聴衆は自分だ。だから、自分が興奮できないようなものではダメだ。自分がいいと思って喜べるようでないと、聴く人の心を動かすことは到底できない。最初にして最高の聴き手は、自分自身なのである」

そう言えば、卑近ながら、当ブログの最初にして最高の読み手は私自身です。クスッと心の中で笑えるかどうか、毎度格闘しています。

ウソです。ここが一流と三流の違いです。


(ふだん作っているものを漆器の器に盛り付けました)

昨年大晦日に読み終えた本は鈴木義幸著『未来を共創する経営チームをつくる』(2020年、ディスカヴァー・トゥエンティワン)でした。

エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル著、櫻井祐子訳『1兆ドルコーチ』(2019年、ダイヤモンド社)を新年最初に読了。

印象に残った箇所を抜粋します。類稀なコーチであるビル・キャンベルの言葉や考えが示されています。

「いま向き合っている相手に細心の注意を払うことの大切さ。・・・相手に全神経を集中させ、じっくり耳を傾けることの大切さを〔ビルから〕学んだ。そうしてから、初めて本題に入る。順番があるんだ」

「もっと耳を傾ければ誰もがいまよりずっと賢くなれる」

「ただ言葉を聞きとるだけじゃない。相手が言いそうなことを先回りして考えたりせず、とにかく耳を傾けろ」

「発見や洞察を促すような質間をしょっ ちゅうする人は、最高の聞き手だと相手に思われる」

「ビルに何をしろと指図されたことは一度もない」

「スウェーデン、ルンド大学の2003年の研究によれば、従業員の話を聞く、声をかけるといった『ありきたりの何でもでもないこと』が、すぐれたリーダーシップの重要な側面だという。そうした行動は従業員に『自分は尊重されていて、目に見えない名もなき存在ではなく、チームワークの一端を担っていると感じ』させることができるからだ」

というわけで、「最高の聞き手」となるよう、本年はこれまで以上に「耳を傾ける」ことを自分の目標にしたいと思います。きなこの上物の情報から地球の歳差運動のことまでいろいろ聞かせてください。


(福島県庁2階ロビーにて)

誰から勧められたのか。記憶にありません。おすすめ人が思い出せない。気に入った人のブログやコラムの中で紹介されていると注文するようにしています。最近はいつもこんな感じです。

石川善樹著作『問い続ける力』(2019年、ちくま新書)を読んでいます。旅の読書です。刺激に満ちています。

「星々のつぶやき」では強調の副詞をできる限り使わないようにしています。「非常に」とか「とても」といった語句です。

『問い続ける力』。この著作は強調の副詞を使って非常に強く勧めます。頭をリフレッシュしたいと思っている方、これまでにない視座を持ってみたいと思う方に特に読んでほしい。

「『いい意味での例外』を見つけられるかにかかっている」

「イノベーションの種となる適切な問いは、『大きな視点』と『小さなディテール』を高速で行ったり来たりすることでしかうまれない」

「人生を因果として捉えるか、あるいは因縁として捉えるか」

印象的な言葉を書き留めながら読んでいます。前書きの「はじめに」がいい。秀逸です。良質な前書きは本文も期待できます。

目次も興味深い。目次をじっと見ているだけで期待値が上がります。私は目次を長時間見つめる癖があります。記憶の沈着化に少しでも資すればとの思いからです。

そして、構成がよくできています。第1部では「『問い』を問う」と題し、著者の問い続けることのきっかけを知ることができます。

第2部の冒頭で「人生を因果として捉えるか、あるいは因縁として捉えるか」の2つの生き方を紹介し、著者は「『人生は因縁である』と捉えたほうがはるかに生きやすいのではないか」と述べ、人生を因縁(ネットワーク)として捉え、出会いというご縁を辿っていく生き方を推奨する。

もちろん、成し遂げたい目標を掲げ明確な結果をイメージする「原因」を意識する生き方もああります。著者はこれを「結果を達成するために大事なこと」と定義しています。

著者は一期一会を大事にする中で次々と不思議な出会いを重ねていく。それらの人々は、著作の言うところの「答えを求める『では派』」ではなく、「問いを求める『とは派』」であったという。

第2部はそれらの出会いのうち9人との対談のエッセンスとなっています。2番目に紹介されている出口治明氏との対談の中の逸話が妙に心に残りました。

(以下、引用)

出口 (前略)整合性ということに気付かされたエピソードがあります。三〇歳をすぎたころ、連合王国の大使館の友人とご飯を食べているときに、日本のテレビ・コマーシャルはクレージーだという話を彼が始めたんです。
 あるおじいさんが、日本の若 い子どもたちと同じ法被を着て、拍子木を叩きながら「戸締まり用心、火の用心」と叫んでいる。当時、そういうテレビ・コマーシャルがありました。
 ところが同じおじいさんが、別のテレビ・コマーシャルでは、世界中の子どもたちと草原で「かごめかごめ」を踊りながら、「世界は一家、人類はみな兄弟」と叫んでいる。
石川 なんと(笑)、たしかに同じおじいさんが、「知らない人に用心せい」と言いながら他方で「人類みな兄弟」と言っているのは矛盾ですね。これは、どういうことだと。
出口 僕は言われるまで気がつかなかったんですが、友人は、このおじいさんはクレージーやで、と。こんな矛盾するコマーシャルをやらせたらあかんと言われました。(後略)


(通勤途上の磐越東線にて)

『リーダーを目指す人の心得』を読んでいます。同書が良心的だと思うのは英語表記で「by Colin Powell with Tony Koltz」と共著者がいることを明記していることです。日本語版でもトニー・コルツと小さな字ではありますが記されています。

著名人の場合、あたかも本人が書いたかのように出版することが多い中で珍しいと思いました。あの「私の履歴書」はほとんどの場合、新聞社側が書いていることを知ったとき、私は軽いショックを受けました。

さて、『リーダーを目指す人の心得』です。

「(前略)私と徹底的に議論し、その上で私の決定をみずからの決断であるかのようにしっかりと遂行することも求める」

コリン・パウエル氏の求める部下像の紹介です。仕様はかなり高い。一方でパウエル氏は人選の難しさを吐露します。

「人選においては、打率5割を超えられれば御の字である」と。

「想像力や創造力に優れ、さまざまなアイデアを思いついたり将来を予測できたりする人も欲しい。私よりも前に問題に気づき、私が知らないうちに対処してくれる部下は宝だと思う。誰よりも早くチャンスに気づき、リスクや危険を早期に察知できる部下も宝だと思う」

さだまさしの「関白宣言」の歌詞を彷彿とさせるハイスペックな要求です。さらに続きます。

「自分やチームと相性のよい人も欲しい」

「部下を選ぶとき、私は、自分の強みをさらに強化し、弱みを補完してくれる人を探す。私が不得意とする分野で私より優秀な人が欲しい。私より頭がいいが、そこに気づいていないか、気づいていてもそういうそぶりを見せない人が欲しい」

「副官については、私よりも厳しくて怖い人を必ず探す。私は善玉、あるいは従軍牧師の役割として、規律を遵守させる役割は副官にしてもらうのだ」

米国4軍のトップである統合参謀本部議長を史上最年少で就任した人だけのことはある。そう思いました。

「優れた管理者は優れたリーダーだし、優れたリーダーは優れた管理者である。ただ、偉大なリーダーには、管理者にないなにかがある。優れた管理者は、チームの設計能力を100%引きだす。偉大なリーダーはその先をめざす。誰もが不可能だと思った110%、120%、150%を引きだすのだ。偉大なリーダーは部下のやる気を引きだすだけでなく、奮い立たせもする」

というわけで、私は自分で自分を奮い立たせます。午後も頑張ります。


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