からつづく)
弁護士との打合せで学んだことは「想定する」ということでした。

相手がこう出てきたら、こう対応しよう、こう言ってきたら、このように切り返そう、などなど。いくつも想定を描き、入念に準備して交渉に臨みました。

交渉場所は、損害保険会社の会議室。弁護士は加害者側の損害保険会社の代理人です。

被害車両の所有者、そしてその車両に同乗していたタイ人女性が、弁護士と私の目の前に座っています。

車両の所有者という人は、ふだん私が接する世界の人ではありません。強面(こわもて)です。若い衆も同席していました。

若い衆が大きな声で威嚇してきます。ナマは迫力があります。でも、弁護士は動じません。一方、所有者の人は凄みはありますが、物腰は柔らかいように見えました。

「おらぁ〜なめてんのか」と若い衆が脅すと、強面さんが「静かにしないか」となだめます。

タイ人女性の負傷の程度を聴取することになりました。私が通訳し、弁護士に伝えます。

示談は想定の範囲内でまとまり、通訳の仕事は1回きりで終わりました。これも四半世紀前の出来事です。

このあと15年後に、まったく違う仕事で、弁護士二人を相手に胃の痛むような交渉をすることになろうとは、私は夢にも思いませんでした。

詳しくは「レッド・オクトーバーを追え!」をご覧ください。

そのとき私は、「想定する」ことに加えて、「誠実」をもって臨みました。

経験というものは、すべて肥やしになるものだ、とだいこんくんはつくづく感じるのでした。

(へつづく)


警察署の刑事課。私は初めてのことで緊張していました。

「こちらへどうぞ」

部屋へ通されると、タイの若い男性が座っていました。顔がこわばっています。相当に緊張しているようです。

私がほほ笑んでタイ語であいさつをすると、表情がいっきにほぐれるのがわかりました。言葉が通じるって、ほんとうに大切ですね。

自販機荒らしの疑いで事情聴取が始まりました。いえ、私ではありません。

紙幣をいったん入れて、自販機に紙幣を挿入したと認識させます。そして、あっと驚く方法で紙幣を戻して、1本だけ注文ボタンを押して、釣銭を手に入れるという窃盗犯です。その巧妙な手口に感心してしまいました。隣県北部や市南部で多発していた事件です。

後日、検察庁での取調べでも通訳人として関わりました。手錠されている人を目の前で見たのは初めてです。心が痛みました。

検察官が聴取を行い、私が通訳した言葉を事務官がパソコンで入力していきます。最後に内容を確認し、供述調書に私が署名・指印をしました。私が罪を犯したような錯覚に陥り緊張しました。四半世紀前のことです。

ほっとしたのもつかの間、この少し後、カタギの住人ではない方と対峙する場面で通訳をすることになるのです。

たまに、拳銃で撃ち抜かれる夢を見るのですが、こういった経験が作用しているのかもしれません。
へつづく)


(【】からつづく)

コンクール課題曲のJ.A.コーディル作曲「吹奏楽のための民話」の中盤でサックスのあとにユーフォニウムが呼応するように奏でる場面があります。

練習の際、「ユーフォ、遅いっ!」と、入るタイミングについてサックスのYさんに何度か注意されました。

さて、コンクール当日、曲の中盤で私は緊張のあまり、音が出なくなってしまいました。リズム音痴の本領発揮です。

帰路の列車の中で顧問のO先生から「音、出てなかったぞ」と叱られ、落ち込みました。音楽家はわかるのですね。

ところで、もう一人ユーフォニウム担当にH君という同級生がいました。譜面の読み方や楽器の吹き方をいつも優しく教えてくれました。勉強も優秀でした。

ある日の夜、H君の家が火事に見舞われ、翌日、H君と妹さんが亡くなったことを知りました。信じられませんでした。

その頃よく練習していた曲はポール・アンカの「ダイアナ」でした。お葬式で皆で「ダイアナ」を演奏し、H君と最後のお別れをしました。

ラジオなどから「ダイアナ」が流れると陽気なポップ調の曲にもかかわらず、悲しみがよみがえります。


ブラスバンドは、子どものころ憧れの最たるものでした。同じ社宅の先輩が屋上などでトランペットを吹いているのを見て、カッコいいなぁと思っていました。

小学校5年生のときに母親に話をしたところ、音痴だから無理じゃないのと言われました。

通級指導教室の「ことばとひびきの教室」のO先生にも相談してみました。

「音痴なのかぁ。ん〜」

あまり賛成ではないようです。

聴力に障害のある子どもが音楽に挑戦しようとしているのです。背中を押してくれてもいいのに...。

音痴は楽器もだめなのか。子どもの心は繊細です。がっかりしました。

この際、音痴党代表代行として一言申し上げたい。

音痴の人間は、周りから「音痴、音痴」とささやかれることによって、余計に自信を喪失し、萎縮してさらに音痴に拍車がかかるという、負の音痴スパイラルに陥ってしまうのです。

結局、私は反発して吹奏楽部に入部しました。金管楽器のユーフォニウムという楽器を担当させてもらえることになりました。

楽器は不思議なもので、譜面通りに吹けば基本的に音痴という現象とは無縁です。これには自信を持ちました。

音痴こそ楽器に挑戦してほしい。そう思いました。

しかし、私の音痴は音感だけではなかったのです。リズムもまた音痴なのでした。
(【】へつづく)


地元のJR駅の改札口にあるこの注意書き。私には「危ない人が来ます!」に見えます。

それはともかく、「危ない人」によって身の危険を感じたことが私はこれまで3回ほどあります。

初回はタイ・バンコクの路線バスの中。

満員のバスの中で若い男二人が目の前でけんかを始めました。一人が刃渡り15cmほどのナイフを振りかざし、もう一人の男はあわててバスを降りて行きました。

ナイフを持った男は私の方を見てニヤリと笑いました。微笑みの国・タイなので私は頬を引きつらせながら笑みを返しました。

2回目はカナダ・モントリオールです。

教授の家でパーティーがあり、私はカレーを作りました。

カレーはどうでもいいのですが、辞去する段になってゲストとして招かれた教授が私の寮まで送ってくれるというのです。

ワインを飲み、酔っ払っています。「大丈夫だ。乗れ」と強引です。

助手席のシートベルトをしっかりと締め、覚悟を決めました。

凍結した路面をゆるゆると走ります。センターラインを越えそうになるたびに「Be careful!」と叫び、注意を促しました。

慣れているのか、スリップしながらもなかなか上手なものです。無事に寮に到着。教授は自宅までたどり着いたのか、私はわかりません。

3回目はニューヨークのホテルでの出来事です。

男3人で泊まりました。午後9時過ぎドアにノックの音。連れの一人がドアに近づき聞いたところ、水道を修理しに来たと相手は言っているとのこと。

絶対に怪しい。ドアを開けた途端、ヤラレると思いました。呼びかけに応じず無視。

翌朝、ホテルのフロントで確認すると、ホテル側が水道業者を呼んだということでした。

以上が私のつたない危ない経験でした。

「危ない人が来ます!」のJRのキャッチコピーを実現すべく、だいこんの着ぐるみで改札口に立ってみたいと思う、春のだいこんくんなのでした。



中学時代、私は卓球部に所属していました。

当時、卓球台は黒板のような濃緑色でした。ところが、卓球はネクラだとタモリが言ったことで日本卓球連盟が奮起。

イメージチェンジを図るため、緑色から現在の青色の卓球台を製作。1992年のバルセロナオリンピックを機に青色の卓球台が世界中に広まったそうです。

さて、ボールが当たっても痛くないという理由で選んだ卓球部。ボールの衝撃は軽いものでしたが、きつい練習が待っていました。

当時、卓球部は県内屈指の強豪として知られ、県大会での団体優勝は当たり前でした。

登校前に火力発電所の同じ社宅に住むY先輩と一緒にランニング。校内では両足首に鉛を巻き付け、つま先歩き。帰宅後、自宅で鉄アレイで素振り。共同浴場でY先輩と卓球談義。

修学旅行にもラケットを持参するなど、卓球のことしか考えられない生活になっていました。

いまでは徘徊するバクのようですが、当時はインパラのような俊敏さを見せました。個人戦最高位は県大会2位です。

しかし、試合当日になると下腹部の調子がおかしくなり、体育館到着と同時にトイレに直行。試合直前にまた駆け込むというありさまでした。頻便暇なしです。

現在、職場の卓球部に所属しています。練習はしていません。勝負に拘泥しない澄み切った新境地を開き、試合前になっても腹痛は起きません。

昨年、私より年上のご婦人と対戦し負け、「最近卓球を始められたのですか」と言われ、ショックを受けただいこんくんなのでした。


先日、自宅玄関前で突風によって眼鏡が吹き飛ばされ、レンズのふちが欠けてしまいました。

眼鏡といえば、四半世紀前にタイ・バンコクのアパートに住んでいたとき、ベッドの上でお尻でつぶしたことがあります。

寮からアパートに移ってすぐの災難でした。

眼鏡屋さんに行き、お尻でつぶした眼鏡を胸ポケットから取り出そうとした瞬間、ポケットに挿しておいた愛用のモンブランの万年筆が引っかかり落下。床で真っ二つに折れ、濃紺のインクが飛び散りました。

当時、私はその万年筆で日本の大学に提出する卒業論文を書いていたところでした。

うなだれる私に眼鏡屋のご主人は万年筆も直せるから心配するなと励ましてくれ、実際に眼鏡も万年筆も直してくれました。地獄に仏を見た思いがしました。

災難はたたみかけてくるものです。

つねに窓を開け放っていたため私はこまめに部屋の拭き掃除をしていました。

ある日、誤って雑巾でコンセントを拭いたとき、電撃が体を走りました。

右手が硬直してコンセントから離れません。右足のかかとからびりびりっと電流が抜けていきます。電圧220ボルトの威力を目の当たりにしました。

ちなみに、3年前にタイで発生した洪水による死因の1割は感電死だったと報じられていました。

ともあれ、だいこんくんは、いまなお、論文の提出ができずうなされる夢を見ることがあります。


生命保険の営業時代、お得意様の塾の経営者から、人手が足りないので講師を務めてほしいと言われました。

突然中学3年生の英語以外の4教科を担当することに。これは一大事です。

テキストを手にしてみると自分が理解できるということと、教えることとは別であると実感しました。

体験やエピソードなどを交えながら、勉強に興味を持ってもらうよう工夫しました。

いつしか、生徒たちから「ジャカルタ先生」と呼ばれるようになりました。折あるごとに東南アジアの話をしたからかもしれません。

ある日、塾の経営者から塾の名前を変えたい。どうしたらいいかと相談を持ちかけられました。

議論の末、私が提案させていただいた、社長の姓に「進学塾」を付けるとの案でまとまり、現在も使われています。

ところで、現在、地元の大学で「地方行政論」という、いかにも固い講座を担当させてもらっています。

私としては、「スネークマンショーに見るお笑いと諧謔の精神」などという、だいこんくんならではのコマを持たせてもらえたらいいなぁと思っています。


その小さな旋盤工場では細かな金属屑や油が飛び散るため、つなぎの作業着に着替えなければなりません。工場長も同じ格好です。

私は元来着替えが嫌いです。面倒くさがり屋です。

また、腸が弱いためすぐにトイレに行きたくなります。

つなぎは下腹部に突如やってくる激痛に対し即応態勢がとれません。真面目な話、とても危険な服です。

さらに、私は身長は180センチ近くあるのですが、胴が長いのです。たぶん股下比率(股下÷身長×100)は40数パーセントだと思います。

したがって、つなぎを着ると股間が下から圧迫されます。

さて、旋盤工場では、直径1センチ、高さ数センチほどの筒状の金属をドリルで穴をあける作業を延々と行います。定位置に金属をセットし、レバーでドリルを下げる。1日何百回もやります。

金属屑が飛び散るため、ときどきエアを吹きかけます。

ドリルと金属との間の摩擦を軽減するため潤滑油が塗られており、その工業用の油脂が手にしつこく着いて取れないのです。石鹸で洗っても洗っても落ちません。

工場長は数十年その作業を続けているのだと当時話を聞き、私は感動したことを覚えています。

つなぎの長所についてひとこと。

歌手のイルカは今年64歳を迎えます。

あの若さの秘訣はデニムのオーバーオールだと思っています。つなぎは若く見せるという効果があるのです。

というわけで、だいこんくんの着ぐるみもじつはつなぎです。もちろん圧迫されます。

圧迫感、その他もろもろが嫌で旋盤工は1か月ほどで辞めました。


(上)からつづく】

境界石はときに土に埋もれていることがあります。

「その辺に境界石があるはずだから掘って」
「はいっ!」

複式ショベル(前号の図を参照)を用いて慣れない手で掘り進めます。腰を上手に使えばいいのですが、へっぴり腰なので、つい腕に力が入ってしまいます。血豆ができて痛いです。

ちなみに、ショベル(英語:shovel)とスコップ(オランダ語:schop)は同じ意味だそうで、ただしJIS規格では足をかける部分があるものをショベル、無い物をスコップとしています。

さて、穴掘りに話を戻します。

複式ショベルを天高く持ち上げて、垂直方向に思いっきり差し込んだそのときです。境界石のてっぺんをショベルが直撃し、赤い市章が柘榴を割ったように砕け散ってしまいました。

「何をやってんだぁっ!!」
「す、すみませんっ!」

頭蓋骨複雑骨折の様を呈している境界石のてっぺん部分を私はかき集め、適当に合わせて埋め戻しました。

複式ショベルは案外扱いが難しく、柄の交差部分に変な力を入れたため、ショベルの部分が噛み合わなくなってしまいました。まるで顎関節症の私の噛み合わせのようです。

さんざん蚊に刺され、境界石は柘榴の実のように砕け散り、複式ショベルはひん曲がり、私はうなだれながら山道を降りていきました。

ここで一句。

砕け散る境界石の柘榴かな
(柘榴は秋の季語ですが勘弁してください)

いまも奥多摩の山中で割れたままであろう境界石に思いを馳せるだいこんくんなのでした。


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